▼投資の勉強

投資でやるべき事 『複利の力を活かす』

複利の力とは

「複利の力」とはどういうことでしょう。
アインシュタインは、かつて「人類最大の発見は、複利の考え方である」と言ったそうですが、複利の力を理解するとても印象的な寓話があります。

むかし、豊臣秀吉が、御伽衆の一人と将棋をしていました。
その人物は、みごと勝利して秀吉から褒美をもうらうことになるのですが、その時こう言ったそうです。
「将棋のマス目に米を一粒。次のマス目に二粒(前の倍)。次のマス目に四粒。これをマス目が一杯になるまでください」
秀吉は、この人物の欲の無いことに感心して、その通りにしようとしましたが、途中で蔵の米が全て無くなってしまうことに気づき、あわてて取り消したというお話です。
もし全てのマス目を埋めることになると、全部で「2,417,851,639,229,260,000,000,000粒(・・数えられません!)」にもなるのです。
ちなみに、これが複利ではなく「単利」ですと、全てのマス目と同じ「81粒」となります。

以下は、「初年度に100万円を投資して、年率10%の投資収益があった場合にいくらになるか」という試算です。単利の場合と複利の場合を比較してみましょう。

■単利と複利

  初年度 1年目 5年目 10年目 20年目 30年目
単利 100万円 110 150 200 300 400
複利 100万円 110 160 260 670 1,750
    差: (1.1倍) (1.3倍) (2.2倍) (4.4倍)

当初は同じ100万円でも、年数が経てば経つほど、単利と複利の差は大きくなります。
20年で約2倍、30年では4倍以上も複利の方がリターンが大きくなるのです。
ちなみに、リターンで設定したリターン値「10%」が大きくなればなるほど、差は拡大します。

複利の力を活かすには

それでは、具体的に複利効果を得るには、どうすればよいでしょう。
投資において複利の力を活かすには、下記のことが必要です。

(複利の力を活かすには)
  • 株価の値上がり分を売却して現金化しない
  • 配当を再投資する
  • これらを出来るだけ長く行なう

値上がり分を売却して現金化しない

例えば株式投資の場合、株価が上がっても、できるだけその値上がり分を売却して現金化しない事が、複利効果を生みます。
下のグラフは、株価が値上がりしても現金化しないで保有し続けた場合(線グラフ)と、現金化した場合(棒グラフ)の、投資家の資産額を比べたものです。

■資産額の違い

  初年度 1年目 10年目 20年目 30年目
現金化しない 100万円 110 260 670 1,750
現金化する 100万円 110 200 300 400
内訳 (投資している資産) (100万円) (100) (100) (100) (100)
(現金化した資産) (0万円) (10) (100) (200) (300)

(値上がり分を現金化した際の税金は考慮せず)

30年目の資産額を比較して見ましょう。
現金化しない場合は、資産額が100万円→1750万円になります。
これは、当初100万円であった資産が、毎年の値上がり分によって年々膨らんでいく(=複利効果)ためです。
一方、現金化した場合は、100万円→400万円にとどまります。
その内訳は、毎年現金化された資産の累計(300万円)と、投資中の資産(100万円)の合計(400万円)です。もし現金化された際の税金を考慮していると、資産はもっと少なくなっているでしょう。

このように、値上がり分を現金化すると複利効果が得られず、資産額を増やすチャンスを逃すことになるのです。

配当を再投資する

さらに、配当(債券なら利息)が出たら、配当金を再投資して、保有株を積み増しする事が複利効果を生みます。
まさに、「利子に利子がつく」効果です。

配当の再投資イメージ

それでは実際に過去のデータから検証してみましょう。
ここでは、過去20年において、米国株式、日本株式で、それぞれ配当を再投資した場合(配当込み)と、再投資しない場合(株価の値上がりのみ)の資産増加を比べてみます。

■配当の再投資効果

  2004年1月 2023年12月 年率平均
リターン
米国株式(配当込み) 米ドル 100万円 620万円 9.6%
米国株式(配当なし) 米ドル 100万円 400万円 7.2%
日本株式(配当込み) 100万円 340万円 6.3%
日本株式(配当なし) 100万円 230万円 4.2%

過去20年においては、株価の値上がりのみでも資産は増えていますが、配当を再投資することで(複利効果が得られ)、より資産が増加していることが分かります。日本株式では約1.5倍、米国株式では約1.6倍の差が出ています。
これは、配当を再投資することで、保有株が余分に積み増しされ、その保有株に対して値上がり益と配当が加わるためです。この複利効果により、資産額が膨らんでいくのです。

以上のように、「複利の力」を活かした投資は、資産額を大きく膨らます効果があります。
そして、それは投資が上手くいく(=元本割れせず利益を出す)確率を高めるのです。

複利効果のある投資商品とは?
具体的な商品選びにおいて、「複利効果を得られるか」という視点はとても重要です。
商品の種類・方針・設計によって、複利効果が得られやすいかが分かります。
  • 配当頻度(年1回、毎月など)
    →頻度が少ないほど複利効果が大きくなる
  • 配当の自動再投資
    →投資信託の中には、配当(分配金)の再投資を自動でやってくれ、購入時のコストも不要なものがある。ETFや個別株の配当は、自分で再投資する作業が必要。
最近は「毎月分配型」の商品が人気ですが、複利の面から見ると、あまりお勧めできません。 毎月分配されることで、税金分だけ再投資の金額が減るためです。また、再投資をせずにお小遣いとして使ってしまう傾向があります。
商品選びの際には、できるだけ「複利効果が得やすい商品」をお勧めします。
→もっと詳しく・・「インデックス投資のはじめ方 具体的なやり方」へ

複利効果は時間が経てば経つほど大きくなります。
複利効果を最大限活かすために、第2のキーワードである「長期投資」があります。